第5回 【演劇鑑賞会とは?】
演劇関係者、略して「演鑑」(えんかん)。
全国の演劇鑑賞会のことを差す。
歴史は古く、現在の演劇鑑賞会の前身は1948(昭和23)年に東京で勤労者のために会員制で発足した「東京勤労者演劇協同組合」にまでさかのぼる。
以後、同様の目的で多くの演劇鑑賞団体が発足し、1962(昭和37)年には、「全国演劇鑑賞団体連絡会議」が発足、各地に散らばっている演劇鑑賞団体が、全国的な組織になった。
今から54年前のことだ。その翌年の63年、全国の5つの地方ブロック組織を基礎として、全国演劇鑑賞団体連絡会議(全国労演)が発足。
65年には53団体、会員数10万人となった。
2007年には大阪勤労者演劇協会(大阪労演)が解散し、現在は12のブロックの演劇鑑賞団体があり、「全国演鑑連」と呼ばれ、以下の12のブロックがある。
北海道演劇鑑賞団体連絡会
東北演劇鑑賞団体連絡会
関越演劇鑑賞団体連絡会
首都圏演劇鑑賞団体連絡会
神奈川県演劇鑑賞団体連絡会
静岡県演劇鑑賞団体連絡会
長野県演劇鑑賞団体連絡会
中部・北陸ブロック協議会
近畿ブロック連絡会
中国地区演劇鑑賞団体連絡会議
四国市民劇場連絡会議
九州演劇鑑賞団体連絡会議
これらのブロックの中に「演劇鑑賞会」があり、数名から成る「サークル」と呼ばれる多くのグループを取りまとめている。
年間会費を納め、年に五回から六回の観劇が提供される。
各地域の事務局でその年の作品を選定し、話し合い、決定するのが基本だ。この状態で50年以上続いているが、どこの演劇鑑賞会も、「会員の高齢化」「会員の減少」が共通の悩みで、若い会員、男性会員の獲得に頭を痛めている。
批評家の立場で意見を言えば、年間に数回の舞台が観られるシステムになっており、それも、いわゆる「新劇」と呼ばれるものを中心に選りすぐられた一流の舞台が多い。
この分野では東京で観るのと同じ体験が地元で味わえることになる。
平幹二朗にしても、今回の『王女メディア』だけではなく、2012年の『王女メディア』、2010年の『冬のライオン』、2006年の『オセロー』、2005年の『冬物語』、2002年の『リア王』、2000年の『シラノ・ド・ベルジュラック』など、精力的に演劇鑑賞会での公演を行っている。
東京の大劇場で主役を演じることのできる役者が、こうして小まめに地方を回り、その土地の演劇に対する想いを届けることは、肉体的にも精神的にも大変だろう。
しかし、あえて東京や大都市の舞台だけに安住していないところに、平幹二朗の役者たる魅力がある。
かつて、昭和の演劇史を語るには欠くことのできないメンバーたちもこうした行動を続けて来た。
その先人たちの苦労が、今も「地方で安価に良質の舞台を」という仕組みを支えているのだ。
こうした努力の積み重ねが日本の演劇文化を支えて来たことを、忘れてはならない。