幹の会と株式会社リリックによるプロデュース公演の輝跡

「平さんへ」

藤本 道

 もう10年以上前になります。
初めてお会いした時の平さんはやはりオーラが凄すぎて、共演させて頂くというのに同じ舞台に立っているとは思えない程、ペーペーの僕は緊張しておりました。
 『オセロー』100を超える全国ツアーの中、怪我もされ満身創痍で、楽屋では足を引きずられてゆっくりゆっくり。
しかしひとたび舞台に上がると嘘みたいに走り回り、エンジン全開でオセローになっている姿に圧倒されっぱなしでした。
しかもそんな中、発声すらまともに出来ていない僕を毎回袖から見ていてくださり、幕間にすれ違うタイミングでその日の感想をくださいました。
平さんはハーハー言いながら…
 
 その後、富良野塾の師匠倉本聰の作品に出た時には良く声が出てると褒められましたよ。
平さんに教えて頂いたのだと言ったら「俺も教えたぞ!」と怒られました。
褒められた後に…本当にありがとうございます!
 
 公演が全て終わった後に、とある推薦状を書いて頂きたいというお願いも快く引き受けて頂き、しかも新宿で会おうと喫茶店で「下書きを書いて来たけどこれで良いかな?」と渡された時は涙が出る程嬉しかったです。
その場で丁寧に正書して下さった時間は一生忘れません。
 
 その時、店内でカップルが大ゲンカして二人共お金を払わず出て行ってしまい、その様子を見て「現実はドラマより面白いよね」とニヤリとされたお顔も忘れません。
 
 こんな名もない大根役者に対しても変わらぬ優しさを頂きました。電車でお見かけした時には一心不乱に台本と向き合っておられ、お声かける事も出来ずスミマセンでした。
きっと今も最新作を読み込んでおられるのだろうなぁと推察致します。
 
 また気が向いたら演技のご指導、是非お願い致します!