幹の会と株式会社リリックによるプロデュース公演の輝跡

「平幹二朗さんを偲んで」 

岩崎良美

平さん・・・
ご無沙汰しておりましたので、 まだ 受け止められない、というか・・・
次の舞台の演目は、シェイクスピアかしら、今度は観に行こう・・・
なんて・・・残念です。
 
平さんとは いくつもの舞台やテレビドラマでも ごいっしょさせて いただきました。
まだ森下にベニサンスタジオがあったころです。
 
平さんが、 いつもおっしゃっていた言葉。 今でも 思い出しています。
特に、ちょっと寝不足で、お化粧もせずに出掛けようかな?なんていう場面で。
 
「普段から きちんと オシャレしなさい。意識して、普段からいいものを、身につけなさい。
でないと、 衣装さんがどんな素晴らしい衣装を用意してくれてもそれを 着こなすことは出来ないよ」
 
ご一緒させていただいた舞台の稽古中は、 必ずお化粧をして、和ものの舞台では、よく和装をして稽古場へ通いました。
 
「稽古初日には、まず台詞を 覚えていらっしゃい。芝居のことなんて考えなくていい」
それは、お芝居などできない私への、平さんの優しいお心配りでした。
平さんは、ご自分の出番がないときも、他のかたの台詞をよく聞いていらっしゃいました。
 
お食事に 連れて行っていただいたときのこと。
テーブルの上に七輪のようなものをおいて、蛤を焼くのですが、 それぞれの蛤に名前をつけて
「お前はもうすぐ美味しく仕上がるね。お前も早く焼きあがるんだよ」 と、おどけてみせたり・・・
なんてお茶目なのだろう、お稽古場での平さんと全然違う・・・と 驚いた時もありました。
 
平さんと同じ舞台に立たせていただいたこと、かけていただいた言葉のすべて・・・
私の宝物です。
 
合掌。