「平さん、
ありがとうございました。」
大滝 寛
幹の会では、2006年からの『オセロー』のツアーに加えていただいた。
8ヶ月にわたる公演。
芝居が嫌いになったらどうしよう、と、1つの芝居をそこまで長期間やったことがなかったので、心配だった。
しかし心配は杞憂だったどころか、とても楽しかった。
幸せだった。
平さんを俳優として、演劇人として、ますます尊敬すると同時に、人間として大好きになった。
開演前のロビーで毎日、我々と一緒にアップをされていた平さん。
アップに鮮やかな赤いスウェットを着て現れ、これユニクロとお茶目な顔をされたこと。
長崎の休演日、喫茶店でグルメ雑誌を眺めていたら、離れた席から、大滝、何かおいしいものある?と、尋ねられ、いっぱいありますと見せたページがたまたまトルコライスなるもので、若い人向きだねとちょっと残念そうな顔だったこと。
キャシオーの酔っぱらいの演技が省エネだねとその夏の流行語を使って発破をかけられたこと。
太地喜和子さんの事故の様子を聞かれ、聞いてあげてよかったでしょと、思い出を分かち合おうとしてくださったこと。
私が時折やらかすオチのない話を、その話やっぱりオチがないの?とがまんして聞いてくださったこと。
最後の『王女メディア』の時にぜひ見てもらいたいと言ってくださったこと。
蜷川も亡くなって寂しくなったと嘆かれているようだったので、葉書を書いたら、『クレシダ』でいっぱいダメ出しを受けていますとちょっと嬉しそうに返事をくださったこと。
『クレシダ』を見に行って、本当によかったと思い付くまま喋った感想をきれいなグラデーションの入った青いシャツ姿でニコニコ聞いてくださったこと。
告別式で岳大さんが話してくれた、ワインをおいしそうに沢山飲まれていたという様子を聞けたこと。
一瞬一瞬が貴重な思い出です。
深く深く感謝します。
平さん、ありがとうございました。