幹の会と株式会社リリックによるプロデュース公演の輝跡

 「平さんを偲んで」 

内藤裕志

 平さんのあの活力は一体どこに潜んでいたのか。
計り知れないパワーの持ち主でした。
 
 もう何百回と演じられたメディアでさえ、毎日毎日考え抜かれ、前日とは違った演技でいきなり舞台に臨まれることがありました。
 
 一度、平さんの瞳が赤く燃えたことがあります。
これは決して比喩ではなく本当に瞳がメラメラと赤く燃えたのです。
蛇に睨まれた蛙よろしく、その瞳に射すくめられた私は、演技とはいえ、心底恐ろしくなりました。
メディアという王女が、まさしく平さんに宿っていると確信した瞬間でした。
それもこれも、日夜メディアについて熟考に熟考を重ねられた現れと思いました。
平幹二朗さんは現代最高の名優でした。
しかし一旦舞台を降りれば、優しく温かな人間・平さんでした。
 
 公演先の土地の名物料理を振る舞って頂いたときは、自分の料理を、食欲旺盛な若輩の私に分けて下さいました。
ステーキ、寿司、焼肉、パスタ……平さんはいつも私に「遠慮なんかしないで、ほら食べなさい」と優しく微笑みながら皿ごと頂きました。
 
今もあの時の平さんの笑顔を想い出すたび涙がこみ上げてきます。
 平さん、本当に本当に有難うございました。
 延べ半年、全国を巡業した『王女メディア』水戸の大千秋楽では、客席から拍手が鳴り止まず「一世一代ふたたびで終わらず、是非みたびを!」の力強い声援が飛び交いました。
 
 あの時、すでに平さんは、きっと次なる壮大なビジョンを描いておられたのではないでしょうか。
今はただ静かにご冥福を祈るばかりです。
 
合掌